農家の庭

風を起こす道具は
今、静かに時を抱いている
幼き日の掌が回した記憶とともに

タイトル「農家の庭」の宮崎油絵画像
農家の庭 1972 日展 P100

納屋の奥に静かに眠っていた、手造りの唐箕。 かつて天草の農家で活躍していたその姿は、今では役目を終え、 木の肌に刻まれた時間とともに、静かに風景の一部となっています。
この作品は、作者が幼少期に唐箕を回した記憶をたどりながら、 その場に漂う空気や光の揺らぎを丁寧に構成した一枚です。

風を起こし、実りを選り分ける唐箕の動きは、 農の営みの中にある“祈り”のような所作として、画面に静かに息づいています。

連作として描かれたこのシリーズは、日展に三度入選を果たしましたが、 現在手元に残るのは、この一枚のみとなっています。

記憶と風景が重なり合うように、 絵の中には、過ぎ去った時間の温もりがそっと宿っており、 鑑賞者の心に、静かな余韻を残してくれる作品です。

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